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東京地方裁判所 平成9年(ワ)9035号 判決

原告

甲野太郎

右訴訟代理人弁護士

村田彰久

被告

大坪裕一

右訴訟代理人弁護士

桜井勇

井上隆行

主文

一  被告は、原告に対し、一六〇万円及び平成九年五月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、四七七万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、東京弁護士会に所属する弁護士である原告が、被告の依頼を受けて被告の代理人として、被告が所有していた借地上の建物の譲渡の際に土地の賃貸人から借地権の譲渡及び借地上の建物の改築の承諾を得て、その報酬として被告に一五〇万円を請求したが、報酬額について原、被告間で争いとなり、原告が委任契約に基づき弁護士報酬を請求した事件である。

一  争いのない事実

1  原告は、東京弁護士会に所属する弁護士である。

2  被告は、訴外法華経寺(以下「法華経寺」という。)が所有する別紙物権目録記載一の土地(以下「本件土地」という。)を賃借し(以下「本件借地権」という。)、本件土地上に、別紙物権目録記載二の建物(以下「本件建物」という。)を所有していた。

3  被告は、平成八年五月ころ、結婚に際して新居を構える場所を検討していたが、本件建物は建物自体が古く、新居としてふさわしくないことから、その対処について原告に相談した。

4  原告は、法華経寺代理人弁護士と交渉し、法華経寺は、当初被告から本件土地の借地権を買い取ることを表明したが、その後これを撤回し、第三者に譲渡すること及び本件建物を建替えることを承諾した。

5  原告は、被告に対し、右報酬として一五〇万円を請求したが、原、被告間で右報酬額について合意が成立せず、被告は原告に対し報酬を支払っていない。

二  争点

原告の主張

1  原告が本件交渉を受任するに至った経緯

最初に、原告が被告から相談を受けたのは、本件建物の処理をめぐってである。被告は、平成八年五月ころ、結婚するにあたり新居を構える場所を検討していたが、本件建物は建物自体が古く、新居として使用するにはふさわしくないことから、その対処方法について、原告に相談した。原告は、第一に、本件建物を大規模に改修すること、第二に、法華経寺の承諾を得て建物を新築すること、第三に、本件建物を借地権付きで売却すること等の対処法を提案して、それに要する費用及び法華経寺に対する対処等について、被告との間でしばしば協議をして、指示・助言等をした。この外、原告は、本件借地権の価格の相場を調査し、法華経寺に支払う承諾料等の額についても調査・検討をした。これに対し、最終的に被告は、被告の義父の助言もあって、本件建物を売却して、他にマンションを購入する方針を決定したものである。その決定に基づき、まず、被告は、原告に対し、本件借地権譲渡について法華経寺の承諾を得るために、その交渉を依頼した。

2  原告は、被告から、本件借地権の譲渡代金を新たに購入するマンションの購入資金の一分として充当したいので、早急に処理してもらいたいと要請を受けたことから、被告の右要請を実現すべく、法華経寺との間で交渉をした。この間、原告は、本件借地権の価格等の調査を行い、また、譲渡代金等についても大体の予測をした。

3  原告は、被告の依頼を受けて、早速法華経寺との間で交渉に入ったが、初めの段階では、法華経寺は借地権の買取りを希望する旨の意思を表明した。これに対し、被告もまた法華経寺の案を承諾したことから、原告は、平成八年七月一一日に、法華経寺に対し借地権譲渡の条件を記載した提案書を交付した。その後、原告は、法華経寺との間で縷々交渉を行ったが、同年一〇月一日に、法華経寺から、借地権を譲り受ける資金がないとの回答があり、借地権買取りの話は白紙に戻された。しかし、法華経寺からは、借地権の譲渡は承諾するとの申出があり、原告は法華経寺との間で借地権の譲渡の承諾に関する条件について話合いを始めた。

4  原告と、法華経寺との話合いの過程において、平成八年一〇月四日に、被告から、建物の新築等についても法華経寺の承諾を得てほしいとの要請を受けた。その理由として、本件建物は建築されてから既に相当期間経過しており、仮に買主が本件建物を購入しても、近い将来には建替えの必要が生じることから、再度、法華経寺との間で交渉をしなければならず、その場合、右の点について、法華経寺の承諾を得られるとは限らないばかりか、買主が法華経寺との交渉をいやがって、買取りを差し控えるおそれがあったからである。そこで、原告は、法華経寺との交渉内容を本件借地権の譲渡に加えて、建物の新築等についても承諾を求めるべく交渉を開始したものである。そして、同月二九日には、法華経寺から本件借地権の譲渡と建物の新築等を承諾する旨の念書の交付を受けた。平成九年一月には、被告が本件建物を借地権付きで三七七〇万円で売却することになり、原告は、法華経寺との間で、借地権譲渡の承諾料の額並びに地代の額等について確認作業に入った。そして同月三〇日に、被告は、法華経寺との間で、借地権の条件は従前どおりにすること並びに借地権譲渡及び建物新築等の承諾料は、右売買代金額の一割にするとの取決めを行った。そして、原告は、法華経寺との合意に基づき、賃貸借契約書を作成し、同年二月一八日に、右契約書に署名捺印がされた。

かくして、被告は、原告の努力により法華経寺から、本件借地権譲渡及び建物新築等について承諾を得られたものであるが、通常、借地権の譲渡並びに建物の新築について承諾を求めた借地非訟の申立てをした場合、その承諾料はそれぞれ別個に算定されるが、実際には原告の交渉が功を奏して、その承諾料は、右念書に記載されているとおり、本件借地権の譲渡代金の一割である三七七万円ですんだものである。

5  原告が受領すべき報酬額

前記のとおり、原告は、被告から、法華経寺との間における借地非訟に関する示談交渉、すなわち、本件借地権の譲渡及び建物の新築等について法華経寺の承諾を得るための交渉の委任を受けたものである。そして、原告の事務処理の結果、法華経寺から本件借地権の譲渡等について承諾を得た。

ところで、原告は、右事務の処理を受任するについて、被告との間で着手金及び報酬金について具体的な額を取決めていない。しかし、原告は、被告との間で、右委任事務が終了し次第、東京弁護士会の「弁護士報酬会規」(以下「報酬会規」という。)に則って、着手金及び報酬金の額を決定し、被告がその額を支払うとの合意をした。

報酬会規によれば、原告が被告から受ける着手金と報酬金は以下のとおりである。

まず、着手金の額については、報酬会規二四条一項は、借地権の額(実勢価格)が五〇〇〇万円以下の場合、着手金は三〇万円ないし五〇万円とすることができると定めている。ところで、原告は、被告から借地権譲渡並びに建物の新築等について承諾を得るための交渉を受任しており、実質上二つの事件を受任している。

そこで、本件借地権の額を確定する必要があるが、被告が買主に対し、本件借地権付き建物を三七七〇万円で売却していることから、右金員を本件借地権の額と定める。次に、着手金の具体的な額を定めることになるが、右委任事務における事案の複雑さ及び事件処理に要した手数の繁簡等を考慮した場合、一件あたり五〇万円が相当である。したがって、原告が被告から得るべき着手金の額は、一〇〇万円である。

次に、報酬金の額については、報酬会規二四条二項一号は、「申立てが認められたときは借地権の額の二分の一を……経済的利益の額として、第一七条の規定により算定された額」であると定めている。

本件における「経済的利益の額」は、本件借地権の額(三七七〇万円)の二分の一である一八八五万円である。また、報酬会規一七条一項では、報酬金の額は、経済的利益の額が三〇〇万円を超え三〇〇〇万円以下の場合、右の額に対する一〇パーセントと定められている。

したがって、本件における一件あたりの報酬金の額は一八八万五〇〇〇円が相当であり、原告が被告から得るべき報酬金の額は三七七万円が相当である。

6  原告は被告から着手金を全く受領していないので、報酬会規に従えば、以下のとおり、本件委任事務にかかる着手金は一〇〇万円、報酬金は三七七万円であり、原告は被告に対し合計四七七万円を請求する。

被告の主張

1  被告は、原告に対し、借地上の建物の処分方法について相談した。それは以前原告に別件で依頼したことがあり、顔見知りだったからである。すなわち、原告には、法律的知識をもとに借地権売買に関する書類作成を依頼したのみである。

2  法華経寺の買上げ希望に対しても、価格については被告らが調査し検討した。ところが、法華経寺が買上げを断念したため、急きょ借地権売買の承諾(新築も含む)の話になったのであって、法華経寺としては買上げを自己の都合で断念した経緯から承諾は進んでしてくれたもので、原告の努力とか交渉などは不要だったのである。

3  しかし、被告としては、原告を介して承諾書を取得したのだから、この費用は支払うべきと考え「請求してください。」と原告に申し向けたが原告は請求をしなかった。被告が法華経寺に譲渡承諾料を支払に行った際、原告は売買代金すら把握していなかった。この際、被告と法華経寺との間で賃貸借期間について、被告は譲渡承諾料を支払った日から二〇年と主張し、法華経寺は既に経過した五年を差し引いた一五年を主張するという意見の不一致があったが、原告はその差を調整する努力をせず、法華経寺の言い分を被告に押しつけたものである。

第三  争点に対する判断

一  原告が本件契約に基づいて処理した委任事務の内容

甲一ないし八、一四、一五、乙一ないし三、証人植田、原告本人、被告本人の各尋問によれば、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  本件土地の従前の賃借人及び本件建物の従前の所有者は、被告の実父であったところ、被告の父は、借地権の売却を検討をしたことがあり、その際被告は、被告の友人で不動産業を営んでいた訴外粂野信夫(以下「粂野」という。)の紹介で原告と知り合い、右借地権の売却に際し、原告に相談したが、結局借地権の売却は実現しなかった。

2  平成五年に被告の父が死亡して、被告が本件土地の借地権を相続した際に、原告は被告の依頼を受けて、法華経寺との間で、借地権の名義書換及び更新手続等の事務交渉をし、その際、着手金として二〇万円、成功報酬として五〇万円を被告から支払を受けたことがある。

3  被告は、平成八年一月ころ、原告に対し、被告が結婚するに際して本件建物が古いためそのまま新居とするにはふさわしくないので、どのようにしたらよいかとの相談を持ちかけた。その際、原、被告間で、①本件建物を大規模に改修するか、②法華経寺の承諾を得て本件建物の建替えをするか、③本件建物及び本件借地権を売却するか、の各方法が検討された。

4  原告は、被告に対し、本件建物の改修費用及び本件借地権の価格の相場を調査するよう助言し、原告は借地権譲渡の承諾料を検討することとした。また、原告としては、本件土地が78.1坪であることを考慮し、本件借地権を財産として残す方法で検討することを助言した。しかし、被告は、建築会社から本件建物の改修に約一八〇〇万円から二〇〇〇万円かかる見積りが提出されたこと、原告の義理の父である訴外植田平八(以下「植田」という。)の助言等から本件建物を借地権付きで売却することとした。

5  右売却に際しては、地主との間で借地権の譲渡の承諾を得る必要があるが、被告は植田から、知り合いの弁護士を紹介する旨の提案を受けたものの、前記1、2の事情から、平成八年五月ころ右事務を原告に依頼した。この時、原告の着手金、報酬金の具体的金額は出ず、両者の間では、本件借地権付き建物が売却できた時点で報酬を払う合意があり、原告は、被告から着手金を受け取っていない。

6  被告は、同年一〇月四日、原告に対し、本件建物の築年数は相当古く、買受け希望者が本件建物を購入したとしても、間もなく建替えの必要が生じるので、増改築の許可を求めるための交渉をも併せて依頼した。この際も原告は、被告から、着手金を受領していない。原告は、早速法華経寺の代理人である長谷川正浩弁護士(以下「長谷川弁護士」という。)との間で、本件借地権の譲渡及び建物の増改築について法華経寺の承諾を得るべく交渉を開始した。

7  右交渉の過程で、法華経寺が借地権を買上げる話が持ち上がり、同年七月一一日、原告が具体的な提案をしたが、法華経寺の住職が入院する等してその回答が同年一〇月三日になってしまい、結局法華経寺の資金繰りがつかず右買上げの話は成立しなかった。もっとも、原告は、右交渉の過程を具体的には被告に伝えていなかった。

8  原告は、同年一一月二五日に、長谷川弁護士から借地権譲渡及び建物増改築の承諾をする、右承諾料は合計で借地権付き建物の売買価格の一割である、との内諾を受け、同月二九日にその旨の念書を受領した。

9  本件借地権付き建物譲渡に関する事実上の交渉については、被告は、植田にも依頼しており、原告が関与した部分は必ずしも多くはなかった。

10  原告は、被告に依頼された借地権譲渡の承諾及び建物の増改築についての処理が終了したので、平成九年二月一五日、被告に対し報酬として一五〇万円を請求する旨伝えた。

11  同月一八日、本件借地権付き建物の買主と法華経寺との間で、賃貸借契約が締結されるとのことで、原告は右契約に立ち会ったが、その際、賃貸借契約の期間について関係者間で争いが生じた。それは、仲介業者が買主に交付した物件説明書等には、借地権の期間が「二〇年」と記載されていたが、被告の借地権は更新から五年が経過しており、残期間が「一五年」であったことから、買受人が期間の不足をどうにかしてほしいと要請したためである。そこで、原告は、被告及び買受人に対し、右賃貸借期間及び金銭処理の問題については、後日協議することを勧め、とりあえず法華経寺との間の契約を成立させた。

12  植田から、原告に対し、同月二〇日に、原告は代理人として何もしない悪徳弁護士である、同月一八日の買主と法華経寺との間の賃貸借契約締結時に被告に不利な立場をとった、一五〇万円の報酬は高額すぎる、原告には五万円を支払う用意がある旨の架電があり、被告から、原告に対し、同月二四日、植田に説明するために請求書の明細を郵送してほしい旨の架電があったので、原告は、同年三月四日に原告に報告書を作成・郵送した。

13  植田は、同月九日、原告に対し、「御通知」を郵送した。それは、①被告の原告に対する依頼は紛争のない書類の作成程度と認識していること、②植田の仕事上のつきあいのあった弁護士の報酬と比較して原告の請求は余りに多額であること、③原告の書類作成料として四〇万円以内の金員なら支払の用意があること、④原告があくまで一五〇万円の請求をするのであれば、原告の所属する東京弁護士会の紛議調停委員会の議にゆだねる所存であること、が記載されていた。

二  着手金及び報酬金の相当額について

1  本件では弁護士報酬について具体的な取決めがなかったのであるが、このような場合には、弁護士と訴訟依頼者との間の報酬の額は、所属弁護士会の報酬規定ばかりでなく、事件の難易及び労力の程度、依頼者との平生からの関係、その他諸般の事情をも斟酌して相当額を算定するほかはない。

2  右のような観点に立って、被告が原告の本件事務処理に対して支払うべき相当な弁護士報酬の額について検討する。

(一)  前記一で検討したとおり、被告が原告に対して依頼したのは、本件借地権の譲渡及び建物の増改築について法華経寺の承諾を得ること、の二件であった。

(二)  そこで、前記一で認定した事実関係を前提として、東京弁護士会弁護士報酬会規に準拠して、原告による本件委任事務処理に対する弁護士報酬の額を試算すると、報酬会規によれば、借地非訟事件の着手金については借地権の額を基準とされ(二四条一項)、報酬金については「申立てが認められたときは、借地権の額の二分の一を、(略)経済的利益の額として、第一七条の規定により算定された額」(二四条二項一号)と定めている。

そして、まず、着手金については、借地権の額を基準とするので借地権の額を算定する必要があり、借地権の額は、当該土地の更地価格及び借地権割合、土地賃貸借契約締結の経緯、経過した借地期間並びに借地上の建物の構造、規模、残存耐用年数等を考慮して決する必要があるが、本件では実際の取引価格である三七七〇万円で計算するのが相当であり、そうすると、報酬会規二四条一項により着手金は三〇万円以上五〇万円以下であるから、ここでは四〇万円と試算する。そして、本件では原告は二件の事件を委任されているから、着手金の合計は、八〇万円となる。

次に、報酬金について試算すると、借地権の額である三七七〇万円の二分の一である一八八五万円を経済的利益とし、報酬会規一七条では、三〇〇万円を超え三〇〇〇万円以下の場合の報酬は一〇パーセントであるから、報酬は一八八万五〇〇〇円となり、二件分の合計は三七七万円となる。

したがって、報酬会規による試算では、本件の弁護士報酬は合計四五七万円となる。

(三)  ところで、報酬会規二四条二項ただし書きは、「弁護士は、依頼者と協議の上、報酬金の額を、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し、適正妥当な範囲で増減額することができる。」としており、更に同条三項で「借地非訟に関する(略)示談交渉事件の着手金及び報酬金は、事件の内容により、第一項の規定による額又は前項の規定により算定された額の、それぞれの三分の二に減額することができる。」とされている。

もっとも、報酬会規のみで本件の弁護士報酬を決定することはできず、右の試算はあくまで参考資料にすぎないのは、言うまでもない。

そこで、更に検討すると、甲二、七によれば、被告から原告が、本件依頼を初めに受けたのは、平成八年五月一日であり、原告が法華経寺から最終的に承諾を取得したのは、同年一〇月二九日であって、その取得に約五か月を要している。しかし、原・被告各本人によれば、右交渉が長期化したのも、一般通常の事件と比較して事務処理が困難であったと認められる特段の事情は認められず、かえって、法華経寺の代表役員が入院していたこと、いったんは借地権を法華経寺が買い取るという意向を示し法華経寺がその検討に時間が必要だったこと、最終的には法華経寺が買取りを断念して借地権譲渡及び増改築の承諾に応じたことなどによるものであって、右承諾に向けての交渉に格別困難な法律問題を含むものではなく、実務上しばしば見受けられる交渉類型であったと認められる。そうだとすれば、本件の弁護士報酬の額は、右報酬会規二四条三項の規定に則り、前記四五七万円の三分の二である三〇四万円に減額するのが相当である。

(四)  さらに、本件で原告が受任した事務は、前記のとおり二件であることが認められるが、両者はその実体が共通であること、原告が被告の友人である粂野の紹介で知り合い、原告が被告の事務処理を何件か処理し、被告も自己の結婚の報告をする等両者の間に親しい交流があったことその他本件に現われた事情を総合勘案すると、被告が原告の委任事務処理に対して支払うべき相当な弁護士報酬の額は、右三〇四万円の半額の近似値である一六〇万円とするのが相当である。

3  したがって、被告は原告に対して、右弁護士報酬一六〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成九年五月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

三  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、被告に対し、一六〇万円及び平成九年五月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるので、その限度においてこれを認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法六四条本文を、仮執行の宣言について同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官梶村太市)

別紙物件目録〈省略〉

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